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親子間継承

親子間継承

②継承開業
 ❶親子間継承
 
親子間継承であっても色々と大変なことはあるようです。一つはハード面です。開業から30年ほど経過しているケースなどでは、建物の老朽化、駐車場が足りないなどがあげられます。ソフト面では、紙カルテ、レセプトの手作業、スタッフの高齢化、親がやっている医療行為が今のスタンダードに追いついていないということもあります。そして、親がやっている医療に患者さんが慣れてしまっているのも問題になることがあります。
 
ハード面は同じ場所に建て直すという方法もありますし、リフォームをするなども選択肢に上がります。近く(向かいや数十メートル離れた土地)に立て直すというケースもあります。駐車場問題は周囲の土地で空いているところを駐車場として利用するなどの場合もあります。
ただし、この場合、子供の希望が必ずしも親に伝わるとは限りません。建て替えで揉めるケースもあるようです。スタッフのために大きめの休憩室を作ろうとして、親から「そんなに広い休憩室はいらないから点滴室を大きくすればいい」「診察室は3つもいらない」等々、親子間で揉めるケースもあるようです。ただ個人的にはこれから診察を継続する人が使い勝手がよくないとそもそも継続できませんので、これから使う子供の意見を優先するべきですし、建て替え時に借金をするのであれば、借金の返済も子供が担うので、子供の意見が優先されるべきだと考えます。そもそも親とはやりたくない!と言って自ら別の地に開業したDrも知っています。親子関係が良くない場合や、親がワンマンだと継承もうまくいかないことがありますので、それなら割り切って、自分で開業という手もありなんだなと教えてもらったことがあります。
あと子供がクリニックを建て直す際に、スタイリッシュな今時のクリニックを希望するケースも多々あります。患者さんが既にいて新規開業とは違うので、収入の見込みもたち、支払いも普通にできますし、それならさらにいい建物を・・・と考えるケースもあります。ただ、医療機器の多くは、それを使うことにより「利益」を生みますが、建物は利益を生み出しません。そのため、建物の外観、内装、その他、見た目の豪華さにお金を多く使うのは、保険診療メインのクリニックではあまり意味がないかもしれません。特に高齢者が多い内科などは、メインとなる患者層が豪華なクリニックを選ぶことはほぼありません。となると「使い勝手のいい」クリニックの方がよほど人気が出ます。土地に余裕があれば、完全バリアフリーの上、正面玄関に車寄せとそこに雨をしのげる屋根があれば、相当便利になります。そういうところにお金をかけた方が喜ばれるかもしれません。
豪華な建物のクリニックの経営者より患者数の多いクリニックの経営者の方が評価されます。個人的には豪華な建物ではなく、シンプルでスタッフや患者さんが使いやすいハードを作るべきだと考えています。
あと駐車場は道を挟んだ向かい側とかクリニックの隣接地であれば問題ないと思いますが、30m離れたところとかになると患者さんや家族の使い勝手は低下します。場合によっては、一度、患者さんを下ろして、その後、駐車場に向かうという手間が必要になる場合もあります。特に雨が降ったりした場合は、さらに不便になり結果、違うクリニックに転医するというケースも存在します。
 
ソフト面(電子カルテは本来はハード面ですが)は非常に難しい問題です。紙カルテから電子カルテは高齢のDrにとっては非常に手間が増えます。一方で、若いDrは病院で慣れていますので使いやすいメリットがあります。ただ欠点は費用がかさむこと、電子カルテ自体はほぼ直接的な金銭利益を生みません(時間短縮による利益と紙カルテ保管スペースを省略で利益はありますが)。ただこれからの時代は電子カルテは必須かなと思います。そこを親と話を合わせる必要は出てきますし、電子カルテになると、医療事務も当然、全てを電子カルテ上で行わなければならず、高齢の医療事務などは付いて行けない可能性があります。あと、スタッフ問題もよく耳にします。今までの親のやり方を踏襲してしまい子供のやり方を認めないというスタッフが存在します。「今まではこうでした」という今までのやり方が全て正しいという考え方のスタッフです。結果的に辞めてしまう(やめてもらう)ことが多いようですが、人事管理のトラブルになる可能性のある部分でもあります。
あとは親のやっていた医療が今の時代にそぐわないというのは、継承したDrからはよく耳にします。中には親が書いたカルテを全部見直していたというDrもいました。80歳近い親が現役でどうしても診察をすると言い張る場合、それを止める手立てがなく、結果、全部カルテを見直していたようです。そしてひどい診療、診断、投薬等があれば次から自分のところに回すように伝えていたようです。ただ、患者はその診療に慣れてしまっていて、今度は現時点で正しい医療に戻そうとすると抵抗にあることもあり、そのDrは非常に疲れ切っていました。あとはよくあるのが親の世代では「投薬のみ」ということをしていることが多く、実際に1年以上、受診がない患者がいるというのも聞いたことがあります。家族が薬を取りに来るのみということでした。そのため、子供が外来を始めてから患者を連れてくるように家族に伝えると「今までは連れて来る必要がなかったのに」といって文句を言われたり、その後来なくなる家族もいたという話を聞きます。
継承ではソフト面でも、苦労は少なからずあります。
 
親子間継承だから簡単というわけにはいきません。また、子供が継いだら、評判がガタ落ちしたというクリニックも知っています。どう親と子供がバランスを取っていくかは非常に難しい問題だと思います。